社長の我慢が部下を育てる~仕事を任せるということ①~

社長の我慢が部下を育てる~仕事を任せるということ~全3回です。
今回はシリーズ1回目をお届けします。

仕事を任された人達というのは、仕事の喜びを感じると自己回転的にうまく仕事が回せるようになっていく。仕事の面白みを感じ、更にやる気を出すようになる。教育者としては我慢しながら口を出さずに任せるということが重要。

鷹尾氏:マネジメント上で最も難しいテーマが「仕事の任せ方」ではないかなと考えていまして、うまく任せる事が出来ている人というのは実は本当に少ないのではないかと日々感じています。
私の昨年の抱負は「信任」、信じて任せたいという抱負を抱いていたわけですが、想像以上に四苦八苦しました。本当に任せて良いのか、でも任せると口を出してはいけない、その辺りのバランス感が難しいなと感じていました。
結果として任せるものと任せられないものを選んでいたと1年間を振り返って感じています。
任せるということの方程式のようなものをテーマにお話させて頂きたいです。

高井氏:仕事を任せるというのは2つの視点があります。
1つは新人や若手を「育てる」というのがあり、これは流れの中で仕事を任せて、口を出すことを我慢して力をつけさせるということ。もう1つは「仕事が出来るようになってから任せる」ということです。権限を与えることにより能力を活用するということ。2つは一緒に考えない方が良いと思います。

1つ目の「育てる」という意味では、我慢しながら育てるということが必要です。ある程度課題やテーマを強調しながら、とにかくやってみなさいと教えながらやっていくということです。
それは子どもが立ち歩きするのと同じように、親心を持ちながら教えていくということです。
そして自立して自分で動けるようになっていけるように支援していく育て方です。
その際の注意点は、あまりにもこの通りにやりなさい、自分の言うことを聞かないと能力がついてないという風に細かく指導し過ぎるとなかなか良い意味での成長軌道にのるというスパイラルに入れません。なぜかというと考え方が身につかない、自分のものになっていない、ただ真似るだけになってしまい適応能力が身につかなくなるからです。この点を教育者、マネージャーとして意識しないといけません。

鷹尾氏:うーん、そうですね~。

高井氏:仕事を任された人達というのは、仕事の喜びを感じると自己回転的にうまく仕事が回せるようになっていくと思います。仕事の面白みを感じ、更にやる気を味わうことが出来るようになります。少し面倒見ながら、教育者としては我慢しながら口を出さずに任せるということが重要だと思います。

鷹尾氏:昨年1年間で強く感じたのは、自分の頭で考えるという機会を与えるということなのかなと。高井様のおっしゃった前者と後者の任せる方法があった場合、当然後者に持ち込めたら、いかにスパイスを効かすかという世界で楽が出来るでしょう。
しかし時系列で考えた場合、今このタイミングで会社にとって経験を積ませた方が良いのか、あるいは短期的に会社にとって良いと判断した答えを与えてしまう方が良いのか、そして半年の全体最適なのか3年の全体最適なのかという所で判断が変わるのではないかと感じています。

高井氏:それは人の育て方の基軸をどこに置くのかということであり、基本パターンとして半年で育って欲しいということであれば、それに対して育ち方が遅れているか、進んでいるかという物差しを既に持っているのではないでしょうか。
会社として、あるいは社長として社員教育の物差しを1つ持っておくと良いと思います。

鷹尾氏:なるほど。今まではどちらかと言いますと個別性を相手に育て方を基軸に変えていたように思います。

高井氏:物差しがあれば教え方がはっきりしますし、教えるテーマも明確です。あるいは今後の実践の場をどう作るか、教育のツールも含めて1つのパターンができ、評価の物差しにもなりえます。その段階でいかに任せられるかということではないでしょうか。

先程の例で言いますと、半年で初期段階を終わらせるという意味での任せ方は終わったとしても後1年、2年になってそれから育っているかどうかというのは別の教育の問題になってくると思います。初期段階の任せ方という部分と、人材としてもっと成長して欲しいというのは次元が少し違ってくるでしょう。

鷹尾氏:なかなか画一的な物差しというのが難しいなとお話を伺っていて感じていたのですが、一人ひとりの部下を見ながら適性を判断し、そこに合わせて半年の間にこんな風になって欲しいという仮説になってしまいがちです。例えばAさんには適用出来るけれど、Bさんにも適用できるというような普遍的な物差しというのが本当に難しいです。

高井氏:それは人それぞれなのでワンパターンで進めるというのは非常に難しいと思いますが、、例えば何人かのモデルケースのような形で、今までの育成例を持っていればある程度適性となぞらえて考えられるのではないでしょうか。

鷹尾氏:子育てで例えると放任主義であれば、お子さんがしっかりするというのがありますよね。例えば私が部下に細かい指示をして、新しい経験を積んだとしても恐らく育たないだろうと思っています。要は「いかに自分の頭で考えるか」ということなので、答えを示さないという事が我慢のしどころではないかと考えています。

高井氏:そうですね、そこは我慢のしどころですね。ただし、その前に会社としての目標や立派になりたいという自分の目標という大きなテーマがあります。それに向かっての行動だということが前提にある中で、人それぞれのアプローチの方法、やり方が違います。
アプローチ方法までもが決められていたらワンパターン化しますが、人それぞれのやり方に口を出さずに我慢していれば幅が広がります。とにかく自分で考えてみるという形で自分の力を高めていく事が今の状況のテーマではないでしょうか。

鷹尾氏:そうですね。

高井氏:あまりに細かく教え込むと、自分の適性に合ったやり方にならずに決められた標準型の人間しか出来ません。特に法人を攻める時というのは、色んなタイプの営業マンが居た方が強いですね。そういう意味では新人段階から、放ったらかしではないのですが、ある種突き放すような教育方法の良さも取り入れながらやっていくというのも1つの教育方法です。

鷹尾氏:あまりにもこの人にはこんな風に育って欲しいという思いを持ちすぎると、そこから逸脱した時に我慢しきれなくなります。

高井氏:そうでしょうね。色んなタイプの営業マンが居る組織というのは強いですよね。同じパターンの人間だけが集まっていると、確かに集中力はありますが振り幅が小さく、変化に対しては弱いという問題が出てくるので、色んなタイプがあった方が良いと思いますね。

もう少し育った段階の「任せる」というのは社長から見ても、当該の人間の上司から見ても「頼りになる」となった時の任せ方は違ってきます。権限委譲をして大きなことをやらせますね。それは目標と権限の使いようとなってきますので、頼りになる部下が出てきた時に、いかに権限委譲をして任せるかというのが大きく会社の成績を左右するということになります。なので新人の場合と出来る人の仕事の任せ方は少し違ってきます。

鷹尾氏:個性が組織全体からはみ出していくような組織で、例えば自分が出来ない事を他の誰かがしてくれるというような形で、会社が大きくなっていく理想はビジョンとして持っています。

高井氏:それはある意味では、経営者、マネージャーの「分身」ですね。成長した部下が自分の思いを分かち、自分を助けてくれる分身であり、権限を下ろすということになりますね。やり方としては目標の共有化、情報の共有化をいかに組織的にやっていくかということです。指示をこと細かくしてやらせるという形にはまりすぎたやり方でやっていくと、出来る人間程自由な発想をするので場合によっては部下が腐ります。

これも我慢が必要ですが、我慢よりはいかに部下を、頑張りを意識してしたたかに動かすかという事がマネジメント上重要になってきます。特に部下が新しいチャレンジをしている時は、指示を聞くように促すのではなく、少し大目に見てあげないといけない部分が出てきます。それは大きな意味での部下の教育、育成になりますね。

鷹尾氏:会社を大きくしていくというイメージとぴったりです。

高井氏:2つ目の任せ方というのが、社長にとって極めて重要なテーマになるのではないでしょうか。

鷹尾氏:そうですね~。

高井氏:いずれにせよ「任せる」という事は、権限を与えるという事です。
部下は権限を与えられると、仕事の幅が広くなり、やらなければならない範囲が広くなるという事ですよね。当該の人間から見ると、やる気を起こす、そしてやる事によって力が付く機会があるというのは間違いありません。私は「任せる」というのは、社長ないしは管理者として意識しているか否かでマネジメントの大きな内容の違いになるのではないかなと思っています。

 

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