社長の我慢が部下を育てる~仕事を任せるということ③~

社長の我慢が部下を育てる~仕事を任せるということ~全3回です。
今回は3回目、最終シリーズをお届けします。

鷹尾氏:戦略と戦術には重なる部分があると。
そう考えますと重なり合った部分にまで手を出してしまっています。

高井氏:社長が全部決めすぎると、部下は社長が言っている通りにすれば良いと思ってしまい、顔では従っていても心では理解していない、白けている。このような状況はよく起こり得ます。そうなってしまうと部下は仕事が面白くなくなっているでしょう。自分がやりたい事がやれるという理念と繋がらなくなってしまいます。

鷹尾氏:逆に言うと戦略と戦術が重なっている部分がないとダメだということでしょうね。重なっていないと夢と現実が乖離してしまう。

高井氏:そうです。

鷹尾氏:では重なっている部分と情報を上に吸上げ、上の夢を下に落としていく管理職(幹部)が会社の命ということですね。

高井氏:そこが重要ですね。部下の人達は先の事ばかり考えていると現実の仕事をこなしていけなくなります。そこでうまく情報共有が出来ていると、部下もやる気が出てくると思います。

鷹尾氏:みんなの長所を見つめて、みんなに活躍して欲しいと思っていると、みんなを管理職(幹部)にしたくなってきます(笑)

高井氏:気持ちはそれで良いです。実際には全員が幹部タイプばかりですとつまらないだけで、かえって組織はギクシャクします。組織は組織らしく作って、多くのできる部下の中からより適性がある人を選んで幹部にすると良いと思います。社長としてはそんな風にいっぱい候補者がいるというのは理想ですね。

鷹尾氏:適性があるかどうかまで正直分かりません。
それは判断基準として戦略と戦術を繋ぐ管理職として、具体的にどんな人が良いというのが会社として経験がないという事です。
ただ、立場を変えて意識変革を試すという意味で、一度役職を付けてみて、予想もしなかった良い所が出てくるかもしれない。という意味も含めて全員幹部にしてみたい。とは思っていますが、果たしてそれで良いのかどうか悩みます。

高井氏:適性は使ってみたりやらせてみたりしないと分からないという難しいテーマなので、結果で判断せざるを得ないような確立の世界でもありますね。人間親しいから近づくと親しいがゆえに却って自己主張がぶつかり喧嘩になるという事もあるので、期待していても期待が過大であれば部下の力量、結果に期待外れの不満も出てくるでしょう。
色んなケースをやってみて成功率がどうかと考えるしかないのではないでしょうか。あくまで適性だけでは判断できないという部分はあると思います。

鷹尾氏:そうですね。引き上げたポジションでの中間管理職として部下に手取り足取りで細かく指示してしまうマネージメント趣向がある人がいます。
会社としては社員全員が自らの長所を見つけて、活躍して欲しい、自己実現をして欲しいという夢があります。そこで中間管理職に引き上げる人間が、部下の管理の仕方が細かすぎるという場合、我が社の管理職としては適性がないということだろうか、ですとか、逆にその人の指導方法なので任せた方が良いのだろうかと。

高井氏:それは程度問題でもあるかと思います。私は人間の能力というのはチャンスを与えれば広がるという人間の可能性を理解し、それを会社運営の基本的な方針とした方が解釈は大きくなると思っています。ですので、あまり細かい事まで指導、指示しすぎる組織というのは良くないと感じますね。現在、ややマニュアル化された仕事の仕方が多い、あるいはマニュアルが中心となっている時代ですのでその点を少し意識する必要があると思います。

鷹尾氏:我が社の方針としては、細かい指導や指示しすぎるというのは適してない感じがします。

高井氏:ただあまりにも自由すぎる会社よりはまだ細かく指導する方が良いというようなバランスの判断ではありますよね。

鷹尾氏:そうですね。。仮にマネージメントされている部下が細かい事ばかり指導されて嫌だと思っていないのであれば、まだ良いのかもしれません。

高井氏:前回のブログ「褒め方、叱り方」でも話していますが、私の部下だった人が全て自分の経験した事を細かく教え込んでいて、周りからは嫌われていました。部下から見た上司の評価という点では、ほとんどそのような点がマイナス評価になっていましたね。その人間は部下の自由な発想、やり方も認めないですし、報告文章の表現方法まで教え込んでいたのですが、そこまでやりすぎてしまうと部下がどんどん言うことを聞かなくなってきますね。

鷹尾氏:仮にそのような人を間違って幹部にしたい一心で幹部にし、上手くいかないとなった場合、きちんと役職を外さないといけない。

高井氏:そうですね。超一流の上司、一流の上司、三流の上司の中で、超一流の上司は本当にすごいので、みんなが真似る。私の経験では、一流、二流も上司は日常的に色々と教えてくれましたが、あまり記憶には残っていません。三流の上司は指示がないので自分でやるしかない。どの上司で自分が育ったかと言いますと、超一流の上司と三流の上司の時に一番育ったなと感じています。他の上司にも色んな事を教えてもらい知識としては残ってはいますが、自分の能力を上げてもらったという感覚にはなっていませんね。でも必要ではありますので、無意味ではなかったとは思っていますが。

鷹尾氏:面白いですね、自分がとても好きな人と嫌いな人から、一番必要な事を与えて貰えるというのと似ていますね。「任せる」というテーマで、どんな基準で誰に任せていくのかということですが、どう考えるべきだとお考えでしょうか。

高井氏:それは個人特定の期待値で人を見るというのもありますが、会社の社風として考えるのが良いと思います。それに社長は「分身」が出来ると仕事がやりやすいですよ。
意見を聞いた時にいい意見、アイディアを言ってくれるというのは非常に参考になりますね。

鷹尾氏:なるほど、まだまだです。前回の「褒め方、叱り方」にも信頼関係という土台があり、それが肝であるという事で、土台がないと褒めても叱っても響かないとおっしゃっていましたね。

高井氏:そうですね、任せるというのは信頼関係が出来ているということですね。

鷹尾氏:誰に何を任せるという所も、誰から見ても二流、三流の上司で全然ダメでも、本人がきちんとそれを認識していて、これから頑張るという思いがあるのであれば、信頼関係ありきで任せても面白いのかなと思いました。それに、考えてみれば一流、二流の人を幹部にしてダメだった場合、役職を外すというのは難儀でしょうし。
三流の人を上げてダメだった場合、また上がってきたら良いから頑張ってくれという風に鍛えることも出来ますね。あるいは超一流であればそのまま役職を付けたまま続けるでしょうし。妙があるなぁと感じています。

高井氏:組織の組み合わせというのは面白いですね。全員一流というのはあり得ないですし、全員三流であれば会社が持たないでしょう。

今回のまとめとして申し上げたいことは、社長、マネージャーにとって「任せる」ということは人材育成上、また、マネージメント上とても重要なテーマであり手段でもあります。何より大きな効果があるということです。この場合、権限の移譲、情報の共有化、任せるための部下育成の目標意識という3つのポイントがあるということを意識する必要があります。
このバランスをしっかり使い込むことにより効果が異なることを見極めると良いですよ。